自宅を売って住み続ける仕組みの注意点を、国交省の資料で確認します。
公開 2026年10月15日
リースバックのデメリットは、主に4つです。売却価格が相場より低くなりやすいこと。家賃を払い続けるため、支払った家賃の合計が売却額を上回ることがあること。定期借家契約だと期間満了で退去になり得ること。買戻しは「当然の権利」ではないこと。
国土交通省の「住宅のリースバックに関するガイドブック」も、この4点をトラブル事例として挙げています。契約前に、売却価格・賃料・契約の種類と期間・買戻しの条件を書面で確かめてください。
リースバックは、自宅を事業者に売って代金を受け取り、同時にその事業者と賃貸借契約を結んで、同じ家に住み続ける仕組みです。売買契約と賃貸借契約の2つがセットになっています。
国土交通省は、令和4年6月24日にこの仕組みについての消費者向けガイドブックを公表しました(報道発表)。現在掲載されている版の表紙には「令和6年4月発行」とあります。ガイドブックが挙げる主な特徴は次のとおりです。
つまり、家の持ち主から、家の借り手に立場が変わります。家に住めるかどうかは、持ち主になった事業者との賃貸借契約しだい、ということです。
ガイドブックは「こんなトラブルに注意しましょう」として、4つの事例を載せています。
| ガイドブックの事例 | デメリットの中身 |
|---|---|
| 解約を申し出たら高額な違約金を請求された | 勧誘されてその場で契約すると、あとから取りやめにくい |
| 支払賃料の合計が数年で売却額を上回ることに、あとで気づいた | 手元資金が家賃で減っていく |
| 市場での取引価格より著しく低い代金で売却した | 売却価格が相場より低くなりやすい |
| 当初の話と実際の賃貸借条件が違い、住み続けられない | 契約の種類と期間によっては退去になる |
売却価格の水準
国土交通省が令和2年度にリースバックを扱う事業者39社に「買取価格の周辺相場に対する割合」を聞いたところ、「7割以下」が全体の50%でした(ガイドブック作成時の検討内容)。事業者が自ら付けた水準の回答で、個々の物件の価格を示すものではありません。それでも、売却価格を相場と比べずに決めてはいけない理由にはなります。
家賃の重さ
売れば固定資産税はかかりません。代わりに毎月の家賃がかかります。住み続ける年数×年間家賃が、受け取った売却代金の何割になるか。契約前に一度、紙に書いて計算してください。
買戻し
ガイドブックは「買戻しは当然の権利ではありません」と書いています。愛知県の注意喚起は、買い戻す際の金額は売却時の金額よりも高めに設定されていることが少なくない、としています(あいちクリオ通信2025年9月号)。
修繕の負担
設備が壊れたとき、修繕費を払うのが自分か事業者か。新しい設備を付けてよいか。これも契約で決まります。ガイドブックは事前の確認を求めています。
賃貸借契約には、大きく「普通借家契約」と「定期借家契約」があります。どちらかで、住み続けられるかどうかが大きく変わります。
| 普通借家契約 | 定期借家契約(借地借家法38条) | |
|---|---|---|
| 更新 | あり | なし(期間満了で終了) |
| 貸主が終わらせるには | 正当の事由が必要(借地借家法28条) | 期間満了で終了。再契約するかは貸主しだい |
| 契約の方法 | - | 書面(電磁的記録を含む)で契約し、更新がない旨を書面で事前に説明する |
| 期間1年以上の場合の通知 | - | 貸主は満了の1年前から6か月前までに終了を通知する |
定期借家契約は、借地借家法38条1項で「契約の更新がないこととする旨を定めることができる」とされる契約です。貸主はあらかじめ、更新がなく期間の満了で終了することを書面で説明しなければなりません。この説明がないと、更新がない旨の定めは無効になります(同条5項)。
リースバックでは定期借家契約が多く使われています。国土交通省の令和2年度の事業者アンケートでは、締結している契約の種類(複数回答可)で「定期借家契約」が80%と最も多い結果でした(検討内容)。ガイドブックは、定期借家契約について「貸主が再契約を拒んだ場合は退去する必要があります」と書いています。
普通借家契約でも、家賃が変わらないとは限りません。借地借家法32条は、税負担や経済事情の変動、近隣の家賃との比較で家賃が不相当になったとき、当事者が将来に向かって増減を請求できると定めています。
※「ずっと住めます」という説明を受けたら、契約書の「契約の種類」「契約期間」「再契約の条件」「賃料改定の条項」の4か所を確認してください。口頭の説明より契約書が優先します。
出典:借地借家法(e-Gov法令検索)第28条・第32条・第38条
国民生活センターは2025年5月21日、「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!」を公表しました。全国の消費生活センター等に寄せられた相談について、「契約当事者の約7割が70歳以上となっており、相談件数がここ数年増加しています」としています(国民生活センター)。年度別の件数は、この公表ページには載っていません。
公表された相談事例には、長時間の勧誘で契約した例、家賃が値上げされて払えなくなった例、認知症の親が相場より著しく安い価格で契約していた例があります。
愛知県も2025年9月、「「住宅のリースバック」は慎重に検討を!」という注意喚起を出しています。紹介されているのは、1,600万円で売ったばかりなのに、買い戻すには諸費用を含めて2,000万円以上と言われた事例です(愛知県 あいちクリオ通信2025年9月号)。
クーリング・オフはできません。宅地建物取引業法37条の2のクーリング・オフは、宅建業者が自ら売主となる契約で、買主を守る制度です。自宅を不動産業者に売る側は対象外。国民生活センターも「自宅を不動産業者に売却した場合、クーリング・オフはできません」と書いています。
困ったときは、消費者ホットライン「188」で最寄りの消費生活センター等につながります。
ガイドブックは、リバースモーゲージや自宅の売却、不動産担保ローンなどと比べて選ぶことを勧めています。違いを並べます。
| リースバック | 仲介で売る | 買取で売る | リバースモーゲージ | |
|---|---|---|---|---|
| 家の持ち主 | 事業者に移る | 買主に移る | 不動産会社に移る | 自分のまま(担保に入れる) |
| 今の家に住み続ける | 賃貸借契約の範囲で可 | 引渡しまで | 引渡しまで | 可 |
| お金の受け取り方 | 売却代金を一括 | 売却代金を一括 | 売却代金を一括 | 借入れ |
| 売却後・借入後の毎月の負担 | 家賃 | なし(住み替え先の費用) | なし(住み替え先の費用) | 利息など(商品による) |
| 固定資産税 | かからない(売却後) | かからない(売却後) | かからない(売却後) | 持ち主として払う |
| 価格の水準 | 事業者の5割が周辺相場の「7割以下」と回答(令和2年度) | 市場で決まる | 公的な統計なし | - |
| 仲介手数料 | 事業者が直接買えばなし | かかる(上限あり) | なし | - |
リバースモーゲージは、自宅を担保にお金を借りる方法です。たとえば住宅金融支援機構と民間金融機関が提携する「リ・バース60」は、満60歳以上の方向けの商品です。毎月の支払いは利息のみで、元金は契約者が亡くなったときに相続人が一括返済するか、担保の自宅と土地を売って返します。生活資金には使えません(住宅金融支援機構)。商品ごとに条件が違うので、金融機関で確かめてください。
住み続けることにこだわらないなら、仲介で売る・買取で売るという選択肢があります。その場合は、売った後の家賃がかかりません。→ 仲介と買取の違い
向きやすい人
向かない人
ガイドブックの「利用する際のポイント」を、確認項目にまとめます。
ガイドブックは「契約を急かす営業トークを鵜呑みにせず」、家族と相談するよう勧めています。その場で決めず、契約書の案を持ち帰ってください。税金や相続への影響が気になる場合は、税理士・弁護士にご確認ください。
リースバックの売却価格が妥当かどうかは、ふつうに売った場合の金額と比べないと判断できません。イエクラベは、仲介で売った場合と買取に出した場合の金額を、匿名のまま同時に出します。
当社は宅地建物取引業者ではありません。売買の媒介または代理は、当社の提携する宅地建物取引業者が行います。AI査定の結果は公開データにもとづく概算であり、売買価格を保証するものではありません。
Qリースバックなら、ずっと今の家に住めますか?
契約しだいです。定期借家契約は期間の満了で終了し、国土交通省のガイドブックは「貸主が再契約を拒んだ場合は退去する必要があります」としています。国交省の令和2年度の事業者アンケートでは、定期借家契約を使う事業者が80%(複数回答可)でした。契約の種類・期間・再契約の条件を契約書で確認してください。
Qリースバックの売却価格は相場の何割くらいですか?
個々の物件で決まり、一律の割合はありません。参考として、国土交通省が令和2年度にリースバック事業者39社に買取価格の周辺相場に対する割合を聞いたところ、「7割以下」が全体の50%でした。仲介で売った場合の相場と並べて比べてください。
Q契約したあとでクーリング・オフはできますか?
できません。宅地建物取引業法のクーリング・オフは、宅建業者が自ら売主となる契約で買主を守る制度です。国民生活センターも、自宅を不動産業者に売却した場合はクーリング・オフはできないと注意を呼びかけています。
Qあとで買い戻すことはできますか?
契約で買戻しが定められていれば可能な場合がありますが、国土交通省のガイドブックは「買戻しは当然の権利ではありません」としています。愛知県の注意喚起は、買戻しの金額が売却時より高めに設定されていることが少なくないとしています。価格・期限・条件が契約書に書かれているかを確認してください。
Qリースバックとリバースモーゲージの違いは何ですか?
リースバックは家を売って借りる契約で、持ち主は事業者に移り、毎月家賃を払います。リバースモーゲージは家を担保にお金を借りる方法で、持ち主は自分のままです。たとえば住宅金融支援機構の「リ・バース60」は満60歳以上の方向けで、毎月の支払いは利息のみ、元金は亡くなったときに相続人の一括返済か担保物件の売却で返します。
出典:国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」/国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」を公表しました(令和4年6月24日)/国土交通省「リースバックガイドブックの作成に際しての検討会での検討内容について」/国土交通省 消費者向けリースバックガイドブック策定に係る検討会/e-Gov法令検索「借地借家法」/e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」/国民生活センター「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!」(2025年5月21日)/愛知県「消費者トラブル情報<あいちクリオ通信2025年9月号>「住宅のリースバック」は慎重に検討を!」/住宅金融支援機構「リ・バース60」
リースバックの提示額が妥当か。ふつうに売った場合の2つの金額と比べられます。
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