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認知症の親の家を売るには。成年後見と家庭裁判所の許可

本人に判断能力がなければ契約は無効。後見人の選任と、家庭裁判所の処分許可が要ります。

公開 2026年10月18日

認知症が進んで判断能力がなくなった親の家は、子が代わりに売ることはできません。民法第3条の2は、意思能力のない人がした法律行為を無効としています。委任状を書いてもらっても、本人に意思能力がなければ委任自体が無効です。

売るには、家庭裁判所で成年後見人を選任してもらい、その後見人が本人に代わって契約します。本人の居住用不動産を売るときは、さらに家庭裁判所の許可が必要です(民法第859条の3)。申立てから後見開始までは多くの場合4か月以内、処分許可の申立手数料は収入印紙800円です。

1. なぜ子が勝手に売れないのか

民法第3条の2:「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」(e-Gov法令検索)

不動産の売買契約は、売主本人が内容を理解して結ぶ必要があります。認知症で判断能力を欠く状態の親が署名した契約は無効ですし、子が親の名前で署名すれば無権代理です。登記を移そうとしても、司法書士は本人の意思確認を行うため、意思確認ができなければ登記申請を進められません。

親の状態売る方法
判断能力がある(契約内容を理解できる)本人が売主として契約できる。将来に備えて任意後見契約も選べる
判断能力が低下しているが残っている医師の診断により、保佐・補助または後見の申立てを検討
判断能力がない成年後見人の選任が必要。本人の署名や委任状では売れない

判断能力の程度は医師の診断書で判断されます。裁判所は診断書の書式と記載ガイドラインを公開しています。

2. 成年後見人を選任する

法定後見には後見・保佐・補助の3類型があり、判断能力の程度で分かれます。申立先は本人の住所地の家庭裁判所です。

項目内容
申立手数料収入印紙800円(後見・保佐・補助とも)。保佐・補助で代理権を付与する申立ては別途800円
登記手数料収入印紙2,600円
そのほか郵便料(裁判所ごと)、医師の診断書、必要に応じて鑑定費用
期間個別の事案によるが、多くの場合、申立てから後見開始まで4か月以内
やめられるか原則できない。本人の判断能力が回復したと認められる場合を除く

出典:法務省「成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A」Q21〜Q25

後見人には、親族が選ばれることも、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることもあります。誰を選ぶかは家庭裁判所が決め、申立人の希望どおりになるとは限りません。後見は「家を売るため」だけの制度ではなく、売却後も本人が亡くなるまで続きます。後見人は毎年、財産の収支を家庭裁判所に報告します。

※「家を売ったら後見を終わらせる」ことはできません。売却代金は本人の財産として後見人が管理し、本人の生活費や施設費に充てます。

3. 居住用不動産は、家庭裁判所の許可が必要

民法第859条の3:「成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。」(e-Gov法令検索)

裁判所の案内では、現在住んでいなくても、入院・入所前に住んでいた家や、将来住む可能性がある家も「居住用」に含まれます。許可なく処分すると、その処分は無効です(裁判所「居住用不動産の処分についての許可」)。

項目内容
申立人成年後見人(保佐人・補助人は処分の代理権がある場合)
申立先後見開始の審判をした家庭裁判所
申立手数料収入印紙800円
郵便料裁判所ごとに異なる(大阪家裁の案内では94円分)
必要書類申立書、処分の必要性を示す資料、不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書、売買契約書案、不動産業者の査定書

大阪家庭裁判所の説明書では、査定額より安く売る場合はその理由の説明書も求められます(大阪家裁「居住用不動産処分許可申立て」説明書)。許可の判断では、売る必要性(施設費の支払いなど)、売却価格の妥当性、本人が帰る場所を失わないかが見られます。

手順は、①後見人が買主を見つけて契約書案を作る、②家庭裁判所に許可を申し立てる、③許可が出てから契約を結ぶ、の順です。契約書に「家庭裁判所の許可を停止条件とする」と書いて先に契約する方法もあります。

4. 判断能力があるうちにできること

親にまだ判断能力があるなら、選択肢は広がります。

  • 本人が売る:売却と施設入居を本人の意思で進める。もっとも手続きが少ない。
  • 任意後見契約:将来判断能力が低下したときに備え、後見人になる人と代理権の範囲を公正証書で決めておく。公正証書の基本手数料13,000円、登記嘱託手数料1,600円、登記の印紙代2,600円(法務省 Q&A Q22)。発効には家庭裁判所による任意後見監督人の選任が必要です。
  • 家族信託:親の財産を子が信託契約で管理・処分する仕組み。法務省・裁判所の制度ではなく民間の契約なので、専門家(司法書士・弁護士)に相談して設計します。

家を売る予定が見えているなら、親の判断能力があるうちに本人の意思で売る、または任意後見で代理権を決めておくのが、費用も期間も小さくなります。

5. イエクラベでできること

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よくあるご質問

Q親が認知症です。子の私が代わりに売れますか?
A

本人に判断能力がなければ、子が代わりに契約することはできません。委任状も、本人に意思能力がなければ無効です(民法第3条の2)。家庭裁判所で成年後見人を選任し、後見人が本人に代わって売ります。

Q成年後見人がいれば、すぐ売れますか?
A

本人の居住用不動産は、家庭裁判所の許可がないと売れません(民法第859条の3)。入院・入所前に住んでいた家も対象です。許可なく売った契約は無効になります。

Q費用と期間はどのくらいですか?
A

後見開始の申立手数料は収入印紙800円、登記手数料2,600円で、そのほか郵便料や診断書・鑑定の費用がかかります。申立てから後見開始まで多くの場合4か月以内。居住用不動産の処分許可は別に申立手数料800円が要ります。

Q家を売り終えたら後見をやめられますか?
A

原則としてやめられません。本人の判断能力が回復したと認められる場合を除き、後見は本人が亡くなるまで続き、後見人は財産管理と家庭裁判所への報告を続けます。

出典:e-Gov法令検索「民法」(明治二十九年法律第八十九号)第3条の2・第859条の3/裁判所「成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可」/大阪家庭裁判所「居住用不動産処分許可申立て」説明書/法務省「成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A」(Q21〜Q25)

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