名義・ローン残高・財産分与の順に確認します。
公開 2026年10月15日
離婚で家を売るときは、①家とローンの名義、②売値とローン残高の差、③財産分与の分け方、の順に確認します。売って代金を分ければ清算は単純です。ローン残高が売値を上回る場合は、売るだけでは終わりません。
財産分与を家庭裁判所に請求できるのは、離婚から5年以内(2026年4月1日より前の離婚は2年以内)。家を相手に渡す側に譲渡所得の課税がある点も、見落とされやすいところです。
なります。民法768条1項は「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と定めています。裁判所は財産分与を「夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を、離婚する際又は離婚後に分けること」と説明しています。
住宅ローンが残っていても対象にできます。法テラスも「財産分与の対象とすることができます」としています。
分ける割合について、2026年4月1日施行の改正で、民法768条3項に次の一文が加わりました。「婚姻中の財産の取得又は維持についての各当事者の寄与の程度は、その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする」。寄与の差がはっきりしなければ、2分の1ずつという考え方が条文に書かれたことになります。
出典:民法768条(e-Gov法令検索)/裁判所「財産分与請求調停」/法テラス「ローンが残っている住宅も、財産分与の対象とすることができるのですか?」
話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に調停・審判を申し立てます。この申立てには期限があります。
| 離婚した日 | 家庭裁判所に請求できる期間 |
|---|---|
| 2026年(令和8年)4月1日以後 | 離婚の時から5年 |
| 2026年(令和8年)3月31日以前 | 離婚の時から2年(改正前の例による) |
期間を2年から5年に延ばしたのは、2024年(令和6年)5月17日に成立した「民法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第33号)です。施行日は2026年4月1日。附則4条で、施行日前に離婚した場合の請求期間は「なお従前の例による」とされています。
つまり、2026年3月以前に離婚した方は、2年のままです。
家を売るかどうか決めかねているうちに期限が過ぎる、ということは避けたいところです。
出典:法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」/同 法律案文(附則4条)/裁判所「財産分与請求調停」
家の所有者(登記の名義)と、住宅ローンの債務者は、同じとは限りません。夫の単独名義の家に妻が連帯保証人になっている、夫婦の共有名義でペアローンを組んでいる、といった組み合わせがあります。
注意したいのは、夫婦の間で家の名義を移すと決めても、ローンの債務者は変わらないことです。法テラスは、名義の変更について「現実には債権者の承諾なく名義を変更できない場合が多いでしょう」と書いています。さらに、離婚後に債務者が返済を怠れば抵当権が実行されて競売になり、住み続けている側が家を失うおそれがある、とも指摘しています。
出典:法務局「登記事項証明書等の請求」/法テラス「ローンが残っている住宅も、財産分与の対象とすることができるのですか?」
| 売って代金を分ける | 片方が住み続ける(名義・ローンはそのまま) | 片方が取得する(財産分与や売買で名義を移す) | |
|---|---|---|---|
| お金の清算 | 代金でローンを完済し、残りを分ける | 家の価値をどう分けるか別に決める必要がある | 取得する側が相手に代償を払うなど、別に決める |
| 住宅ローン | 完済すれば終わる | 債務者は元のまま。返済が滞ると競売のおそれ | 名義変更には債権者(金融機関)の承諾が要る場合が多い |
| 税金 | 売った人(所有者)に譲渡所得。条件を満たせば3,000万円控除 | 売買や分与がなければ譲渡所得は生じない | 渡した側に譲渡所得(分与時の時価で計算) |
| 向いている状況 | 売値がローン残高を上回る。どちらも住まない | 子の学校など、すぐに転居しにくい事情がある | 取得する側にローンを引き受ける資力がある |
売るかどうかを決めるには、売値の見込みが欠かせません。AI査定で仲介と買取の2つの金額を出しておくと、ローン残高と比べやすくなります。住み続ける場合も、家の価値が分からなければ財産分与の計算ができません。
法テラスは「住宅ローンの残高が住宅の価格を上回っている状態(オーバーローン)の場合は、住宅の価値はゼロなので、それのみでは財産分与の対象になりません」と説明しています。預貯金など他の財産と合わせて、個別の事情に応じて解決することになります。
売る場合、代金だけではローンを完済できません。方法は2つです。
どちらの場合も、不足分を誰がどう負担するかは夫婦の話し合いになります。3節のとおり、夫婦間の合意だけではローンの債務者は変わりません。連帯保証人・連帯債務者の立場も含めて、借入先にご確認ください。オーバーローンの家の売り方は住宅ローンが残っている場合にまとめています。
国税庁は、土地や建物で財産分与をした場合、「分与した人に譲渡所得の課税が行われることになります」としています。
| 家を渡した人 | 家を受け取った人 | |
|---|---|---|
| 所得税 | 譲渡所得の課税対象。収入金額は分与した時の時価 | 分与を受けた日に、その時の時価で取得したことになる |
| 贈与税 | — | 通常かからない。ただし分与が多過ぎる部分や、税を免れるための離婚と認められる場合はかかる |
| 将来売るとき | — | 長期・短期の判定は分与を受けた日を基準にする |
家を渡す側は、現金を受け取っていなくても、時価で売ったのと同じように計算されます。購入時より時価が高ければ、税金が生じることがあります。
国税庁の質疑応答事例でも、財産分与で住宅を取得した事例について「贈与による取得ではなく」「前夫は譲渡所得の申告が必要となります」と回答しています。
譲渡所得の計算のしかたは売ったときの税金をご覧ください。
出典:国税庁 No.3114「離婚して土地建物などを渡したとき」/国税庁 No.4414「離婚して財産をもらったとき」/国税庁 質疑応答事例「財産分与により住宅を取得した場合」(いずれも令和8年4月1日現在法令等)
自分が住んでいた家を売ると、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。離婚で問題になるのは、次の3点です。
ほかに、売った年の前年・前々年にこの特例や、マイホームの譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例を受けていないことなどの要件もあります。
※財産分与で家を渡す場合、離婚届の提出前か後かで「夫婦への譲渡」にあたるかが問題になり得ます。どの時点で夫婦かを判定するかを明示した国税庁のページは確認できませんでした。分与の時期を決める前に、税務署または税理士にご確認ください。
特例の詳しい要件は3,000万円の特別控除にまとめています。
出典:国税庁 No.3302「マイホームを売ったときの特例」/国税庁 No.3308「共有のマイホームを売ったとき」(いずれも令和8年4月1日現在法令等)
財産分与の内容や税の扱いは、個別の事情で変わります。弁護士・司法書士・税理士にご確認ください。どこに相談すればよいか分からないときは、法テラス・サポートダイヤル(0570-078374、平日9時〜21時、土曜9時〜17時)で窓口の案内を受けられます。
離婚で家をどうするか決めるには、まず家がいくらで売れるかを知る必要があります。イエクラベは、仲介で売った場合と買取に出した場合の金額を同時に、匿名のまま出します。
当社は宅地建物取引業者ではありません。売買の媒介または代理は、当社の提携する宅地建物取引業者が行います。AI査定の結果は公開データにもとづく概算であり、売買価格を保証するものではありません。
Q財産分与はいつまで請求できますか?
家庭裁判所への請求は、2026年4月1日以後に離婚した場合は離婚の時から5年以内です。2026年3月31日以前に離婚した場合は、改正前の例により離婚の時から2年以内です。
Q住宅ローンが残っている家も財産分与の対象になりますか?
対象にできます。ただし、ローン残高が家の価格を上回るオーバーローンの場合、家の価値はゼロと考えられ、家だけでは財産分与の対象になりません。他の財産と合わせて個別に解決することになります。
Q財産分与で家をもらうと贈与税がかかりますか?
通常はかかりません。ただし、分与された財産が多過ぎる場合はその部分に、離婚が贈与税や相続税を免れるためと認められる場合は受け取った財産すべてに贈与税がかかります。
Q家を相手に渡した側に税金はかかりますか?
かかることがあります。土地や建物で財産分与をすると、分与した人に譲渡所得の課税が行われ、収入金額は分与した時の時価とされます。購入時より時価が高ければ税金が生じます。
Q夫名義の家を妻名義に変えれば、ローンも妻に移りますか?
移りません。家の名義とローンの債務者は別です。夫婦間で名義の移転に合意しても債務者は元のままで、債権者の承諾なく名義を変更できない場合が多いとされています。借入先の金融機関に相談してください。
出典:民法768条(e-Gov法令検索)/法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」/法務省「民法等の一部を改正する法律の概要」/法務省「民法等の一部を改正する法律」(附則)/裁判所「財産分与請求調停」/法テラス「ローンが残っている住宅も、財産分与の対象とすることができるのですか?」/法務局「登記事項証明書等の請求」/国税庁 No.3114「離婚して土地建物などを渡したとき」/国税庁 No.4414「離婚して財産をもらったとき」/国税庁 質疑応答事例「財産分与により住宅を取得した場合」/国税庁 No.3302「マイホームを売ったときの特例」/国税庁 No.3308「共有のマイホームを売ったとき」/法テラス・サポートダイヤル
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