買主は放棄、売主は倍返しで解除できる。相手が「履行に着手」したら、もうできません。
公開 2026年10月18日
手付金は、売買契約を結ぶときに買主が売主に渡すお金です。民法では、特に定めがなければ「解約手付」として扱われ、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約を解除できます。ただし、相手方が契約の履行に着手した後はできません(民法第557条)。
売主が宅地建物取引業者の場合、手付の額は代金の2割が上限で、どんな名目の手付でも解約手付として扱われます(宅建業法第39条)。個人同士の売買に金額の上限はなく、売買代金の5〜10%程度で決めることが多いですが、これは法律で決まった数字ではありません。
民法第557条第1項:「買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。」(e-Gov法令検索)
この解除は、相手に落ち度がなくてもできます。「やっぱりやめたい」が通る代わりに、手付の額だけ損をする仕組みです。民法第557条第2項により、手付による解除では損害賠償の請求はできません(第545条第4項の不適用)。
| 誰が解除 | 何をする | いつまで |
|---|---|---|
| 買主 | 渡した手付を放棄する | 売主が履行に着手するまで |
| 売主 | 受け取った手付の倍額を現実に提供する | 買主が履行に着手するまで |
「現実に提供」なので、売主は「倍返しします」と言うだけでは足りず、実際にお金を用意して差し出す必要があります。
解除できなくなる境目が「相手方が契約の履行に着手した後」です。条文に定義はなく、個別の事情で判断されます。実務では、買主が残代金を用意して決済日を待っている、売主が引渡しのために引っ越しを済ませた、といった事実が目安になります。
自分が履行に着手していても、相手がまだなら解除はできます。条文は「相手方が」着手した後を禁じているからです。迷うときは、契約書に手付解除の期限日を書いておく方法があります。期限日までは、履行の着手に関係なく手付解除ができる、という合意です。
※手付解除の期限日は、契約書で決める任意の条項です。民法が定めているのは「相手方の履行の着手」という基準だけです。
宅地建物取引業者が自ら売主になる場合、宅建業法第39条が買主を守っています。
| 売主 | 手付の上限 | 性質 |
|---|---|---|
| 宅地建物取引業者 | 代金の2割 | 必ず解約手付。買主に不利な特約は無効 |
| 個人 | 法律上の上限なし | 原則として解約手付。特約で変えられる |
買取業者に売る場合は、買主が業者なので第39条の制限は働きません(制限は「自ら売主」の場合)。個人間の仲介売買も同じです。
手付は、契約を軽く破れないようにする「縛り」です。額が小さいと相手に簡単に解除されやすく、大きいと自分も解除しにくくなります。
手付金は、売買代金の一部として最終的に売却価格に含まれます。税金の計算でも「売った金額」に入ります。受け取った手付を、決済前に別の用途に使うのは、解除された場合の倍返しができなくなるので避けてください。
イエクラベのAI査定は、仲介で売った場合と買取に出した場合の金額を同時に出します。買取なら買主は業者で、契約から決済までの期間が短く、手付解除のリスクを抱える期間も短くなります。
当社は宅地建物取引業者ではありません。売買の媒介または代理は、当社の提携する宅地建物取引業者が行います。AI査定の結果は公開データにもとづく概算であり、売買価格を保証するものではありません。
Q手付金の相場はいくらですか?
法律で決まった額はありません。個人間の売買では売買代金の5〜10%程度で決めることが多いですが、合意で自由に決められます。売主が宅地建物取引業者の場合だけ、代金の2割が上限です(宅建業法第39条)。
Q買主が契約をやめたいと言ってきました。手付はもらえますか?
相手方である売主が履行に着手する前なら、買主は手付を放棄して解除できます。この場合、手付は売主のものになり、損害賠償は請求できません(民法第557条)。売主がすでに履行に着手していれば、買主は手付解除できません。
Q売主の都合で解除するには?
受け取った手付の倍額を買主に現実に提供して解除します。買主が履行に着手した後はできません。「倍返しします」と伝えるだけでは足りず、実際に用意して差し出す必要があります。
Qローン特約で解除されたら、手付はどうなりますか?
ローン特約による解除は手付解除とは別の仕組みで、契約書の定めによりますが、手付は全額返還するのが通常です。契約書の特約条項で確認してください。
出典:e-Gov法令検索「民法」(明治二十九年法律第八十九号)第557条/e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(昭和二十七年法律第百七十六号)第39条
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