2024年7月の告示改正で、800万円以下(税抜)の空き家等を売買する際の仲介手数料の上限が、税込33万円まで広がりました。500万円の物件でも800万円と同じ上限になる理由を、一次資料をもとに整理します。
公開 2026年9月1日/最終更新 2026年9月3日
仲介手数料の全体像は 仲介手数料の上限と計算方法 をご覧ください。ここでは、2024年7月に新設された「800万円以下の空き家等」の特例だけを詳しく取り上げます。
2024年(令和6年)7月1日、仲介手数料の上限を定める昭和45年建設省告示第1552号が改正され、「低廉な空家等」(税抜800万円以下の宅地・建物)を売買するときの仲介手数料の上限が、30万円(税込33万円)まで引き上げられました。それまでは400万円以下・18万円(税込19.8万円)が上限でした。
ここで誤解されやすいのが、この33万円という上限は800万円ちょうどの物件だけでなく、800万円以下のすべての価格帯に一律で適用されるという点です。500万円の空き家であっても、条件を満たせば33万円まで請求できます。
| 区分 | 改正前(〜令和6年6月30日) | 改正後(令和6年7月1日〜) |
|---|---|---|
| 対象となる価格 | 400万円以下(税抜) | 800万円以下(税抜) |
| 仲介の上限(税込) | 19.8万円(18万円の1.1倍) | 33万円(30万円の1.1倍) |
| 代理の上限(税込) | 39.6万円 | 66万円 |
対象となる価格の上限が400万円から800万円へ、仲介手数料の上限が19.8万円から33万円へ、それぞれ引き上げられました。この特例は「低廉な空家等」、つまり通常の計算では手数料が安すぎて取り扱ってもらいにくい、安価な空き家等を市場に乗せやすくすることが目的です。
出典:国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号・令和6年7月1日施行版)/同「新旧対照表」
「800万円以下」という条件だけを見ると、800万円の物件にだけ効く特例のように見えるかもしれません。実際には、800万円以下の価格帯全体に一律で効くルールです。通常の速算式(売買価格 × 3.3% + 6.6万円)と並べると、関係がはっきりします。
| 売買価格 | 通常の速算式 | 特例適用後の上限(税込) |
|---|---|---|
| 300万円 | 16.5万円 | 33.0万円 |
| 500万円 | 23.1万円 | 33.0万円 |
| 700万円 | 29.7万円 | 33.0万円 |
| 800万円 | 33.0万円 | 33.0万円(通常の計算と一致) |
通常の速算式では、価格が下がるほど上限も下がっていきます。800万円のときにちょうど33.0万円と一致し、それより安い300万円・500万円・700万円では、通常の計算結果が33万円を下回ります。特例はこの下回った分を33万円まで引き上げるものなので、800万円以下のどの価格でも上限は同じ33万円になります。
早見表などで「500万円=23.1万円」とだけ書かれている場合、それは特例を使わない通常の速算式の結果です。800万円以下の空き家等であれば、そこから33万円まで引き上げられる余地がある、という点まで含めて確認してください。
買主を探して売主と買主のあいだに立つ「媒介」に対し、売主または買主の一方から委任を受けて契約を代わりに行う「代理」という形態もあります。低廉な空家等の特例では、代理の上限は媒介の上限(33万円)の2倍以内、つまり最大66万円までです(告示第八)。ただし相手方からも報酬を受ける場合は、依頼者と相手方から受ける報酬の合計が66万円以内という但書があります。
通常の売買における代理の報酬も、媒介の2倍以内という考え方は共通しています。低廉な空家等の特例でも、この関係はそのまま維持されています。
告示は、「当該媒介に要する費用を勘案して」通常の計算方法による金額を超えて報酬を受けることができる、という書き方をしています。上限が上がるというだけで、必ず33万円が請求されるわけではありません。
また、この特例は依頼者にとって手数料が上がる方向の制度です。令和6年の改正で、対象は売主だけでなく買主から受ける報酬にも広がりました。そのため、あらかじめ依頼者(売主・買主)に対して、通常より高い金額になる理由を説明し、合意を得ることが前提とされています(国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」)。契約前に、上限の考え方と実際に請求される金額の見積もりを確認しておくと安心です。
今回の特例は売買を対象にしたものですが、賃貸についても近い趣旨の特例があります。通常、貸借の媒介・代理の報酬は、いずれも「借賃の1か月分の1.1倍に相当する金額以内」です。長期の空家等(長期間使われておらず、今後も使われる見込みのない宅地・建物)の賃貸借については、借主から受け取る報酬を借賃1か月分の1.1倍以内(居住用で借主の承諾がなければ0.55倍以内)に収めることを条件に、貸主・借主から受け取る報酬の合計が借賃1か月分の2.2倍まで認められます(告示第九・第十)。貸主だけから2.2倍を受け取れる、という意味ではありません。
空き家のまま放置されがちな低廉な物件を、売買・賃貸のどちらの形でも動かしやすくする、という同じ方向性の改正です。
総住宅数に占める空き家の割合は、三重県が16.3%、岐阜県が16.1%と、全国平均の13.8%を上回ります。岐阜県では、賃貸にも売却にも出されていない「その他空き家」が総住宅数の8.1%(全国平均5.9%)を占めており、相続した築古の実家がそのまま置かれているケースが少なくありません。
こうした物件は立地や築年数から流通価格が800万円以下になりやすく、今回の特例が関わる場面が多くなります。取り扱いを断られやすい価格帯だからこそ、上限が引き上げられた背景を知っておくと、仲介会社との話がスムーズになります。
手数料の上限がいくらになるかは、そもそも物件がいくらで売れそうかが分かってはじめて意味を持ちます。イエクラベのAI査定は、仲介の想定価格と買取の想定価格を匿名のまま同時に確認できます。
当社は宅地建物取引業者ではありません。売買の媒介または代理は、当社の提携する宅地建物取引業者が行います。
Q800万円以下ならどんな空き家でも仲介手数料は33万円になりますか?
いいえ。対象は「低廉な空家等」に該当する、税抜800万円以下の宅地・建物の売買に限られます。上限が引き上げられるだけで、必ず33万円を請求されるわけではありません。
Q500万円の物件なのに、なぜ800万円と同じ33万円が上限なのですか?
この特例は「800万円以下」という価格帯全体に一律で効くルールで、800万円という金額だけに紐づくものではないためです。通常の速算式(3.3%+6.6万円)で計算すると、800万円のときにちょうど33.0万円と一致しますが、それより安い物件では通常の計算結果が33万円を下回るため、特例を使うことで33万円まで引き上げられます。
Q代理の場合の上限はどうなりますか?
媒介の上限(33万円)の2倍以内、つまり最大66万円までです。相手方からも報酬を受ける場合は、両方の合計で66万円以内になります。
Qこの特例はすべての取引に自動的に適用されますか?
いいえ。告示は、通常の計算方法による金額を超えて報酬を受けることができる、という書き方をしています。また手数料が上がる方向の制度のため、あらかじめ依頼者(売主・買主)への説明と合意が前提とされています。
Q賃貸物件にも同様の特例はありますか?
長期の空家等の賃貸借については、借主からの報酬を借賃1か月分の1.1倍以内に収めることを条件に、貸主・借主から受け取る報酬の合計が借賃1か月分の2.2倍まで認められる特例があります。売買の特例とは別の仕組みです。
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