査定額の高さより根拠を比べる。一括査定の仕組みと使い方を整理します。
公開 2026年10月15日
不動産一括査定のデメリットは、入力した情報が複数の会社に届くため連絡が増えること、そして会社ごとに査定額の幅が出て、高い数字に気持ちが引っぱられやすいことです。査定額は「この価格で売れる」という保証ではありません。
宅建業者は、売る価格について意見を述べるとき、その根拠を明らかにしなければなりません(宅地建物取引業法34条の2第2項)。一括査定を使うなら、金額の高さではなく根拠を比べ、成約事例を自分でも確かめることがコツです。
一括査定は、物件の所在地や広さと、名前・電話番号・メールアドレスなどの連絡先を一度入力すると、その情報が複数の不動産会社に送られるサービスです。受け取った会社がそれぞれ査定し、結果を連絡してきます。
売主にとっては、一社ずつ問い合わせる手間が省けます。比べる相手が最初から複数いる、というのも利点です。
一方で、不動産会社にとって一括査定は「売却を考えている人の連絡先」を得る入口でもあります。査定の先にあるのは媒介契約です。この構造を知っておくと、デメリットの理由が見えてきます。
① 連絡が多くなる
連絡先が複数の会社に届くので、電話やメールがその数だけ来ることがあります。何社に送られるか、連絡の手段を選べるかはサービスごとに違います。申し込む前に画面の説明を確かめてください。なお、一括査定の利用者がどれくらい連絡を受けたかを調べた公的な統計は見当たりませんでした。
② 査定額に幅が出る
同じ物件でも、会社によって査定額は違います。参考にする取引事例、建物の評価の仕方、その会社の得意なエリアや客層が違うからです。幅があること自体は不自然ではありません。問題は、いちばん高い数字だけを見て会社を選んでしまうことです。
③ 高い査定額で媒介契約を取りにくる構造
媒介契約を結ぶと、宅建業者は「売買すべき価額」を書いた書面を売主に渡します(宅地建物取引業法34条の2第1項第2号)。そこで、他社より高い査定額を出せば契約を取りやすくなる、という動機が働き得ます。高く出した価格で売れなければ、あとで値下げを提案されることになります。
これに対して法律は、価額について意見を述べるときは「その根拠を明らかにしなければならない」と定めています(同条第2項)。国の解釈・運用の考え方では、根拠は価格査定マニュアルや「同種の取引事例等他に合理的な説明がつくもの」とされ、根拠の明示は口頭でも書面でもよいとされています(国土交通省資料)。
④ 囲い込み
「囲い込み」とは、一部の宅建業者が自社の利益のため、売主・買主の双方から報酬を得ることを目的に、物件をほかの業者に紹介しない行為です(国土交通省 売主向けリーフレット)。査定額の高さとは別の問題ですが、媒介契約を結んだあとに起こり得ます。
対策として、令和7年1月1日から、専任媒介・専属専任媒介の物件について、宅建業者にレインズへの物件の取引状況(ステータス)の登録が義務付けられました。売主は、宅建業者から交付される「登録証明書」の2次元コードから、自分の物件が「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」のどれになっているかを確認できます(国土交通省)。
※専任媒介契約の有効期間は3か月を超えることができません(宅地建物取引業法34条の2第3項)。高い査定額を信じて契約しても、3か月ごとに見直す機会があります。契約条項の個別の判断は弁護士にご確認ください。→ 媒介契約の種類と選び方
出典:宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)第34条の2/国土交通省「レインズの機能強化について、物件の売主向けのリーフレットを作成しました!」(令和6年12月24日)
査定には大きく2つのやり方があります。一括査定で申し込むと、どちらかを選ぶ画面が出ることが多いです。
| 机上査定(簡易査定) | 訪問査定 | |
|---|---|---|
| 見るもの | 所在地・面積・築年数などの入力情報と、周辺の取引事例 | 上記に加えて、室内・外観・日当たり・周辺環境・境界など現地の状況 |
| 立ち会い | 不要 | 必要 |
| 精度 | 現地の状態が反映されない分、幅が出やすい | 個別の事情が反映される |
| 向く場面 | 売るかどうかを決める前に目安を知りたい | 売り出し価格を決めたい・媒介契約を考えている |
机上査定は「おおよその位置」を知るためのもの、訪問査定は「売り出し価格を決める」ためのもの、と考えると使い分けやすくなります。机上査定と訪問査定で何割違うかを示した公的な統計はありません。
不動産の価格には、似ているけれど別のものが3つあります。
| 価格 | 誰が決めるか | 意味 |
|---|---|---|
| 査定額 | 不動産会社 | 「このくらいで売れそう」という会社の意見 |
| 売り出し価格 | 売主(会社の意見を参考に) | 広告に出す価格。交渉の出発点 |
| 成約価格 | 売主と買主の合意 | 実際に売れた価格 |
買主が払うのは成約価格です。査定額がいくら高くても、買主がその価格で買うとは限りません。だからこそ、査定額の「根拠」と、近くで実際にいくらで売れたかという「成約事例」を見ることが大切です。
仲介で売るか、不動産会社に買い取ってもらうかでも、価格の決まり方は変わります。→ 仲介と買取の違い
一括査定をうまく使うための手順です。特定のサービスではなく、どのサービスにも当てはまる使い方をまとめます。
成約事例を自分で調べる公的なサイト
| サイト | 運営 | 見られる情報 |
|---|---|---|
| 不動産情報ライブラリ | 国土交通省 | 不動産の取引価格、地価公示などの価格情報。成約価格情報は、レインズ保有の情報を個別の取引が特定できないよう加工したもの |
| レインズ・マーケット・インフォメーション | 指定流通機構(レインズ) | レインズに集積された成約情報をもとにした不動産取引価格 |
| 中部圏不動産流通機構 | 公益社団法人中部圏不動産流通機構 | 愛知・三重・岐阜を含む中部7県の市場動向(マーケットウォッチ) |
不動産情報ライブラリの取引価格情報は、平成18年4月から取引当事者へのアンケート調査をもとに蓄積されたものです(不動産取引価格情報提供制度)。調べ方の詳しい手順は、相場の調べ方にまとめています。
出典:国土交通省「「不動産情報ライブラリ」の運用を開始します」(令和6年3月1日)/国土交通省「不動産取引価格公開サイト本格稼働開始」(平成19年4月12日)
「まだ売ると決めていない」「電話は困る」という段階なら、連絡先を出さずに目安を知る方法があります。
目安がわかってから一括査定や訪問査定に進めば、高すぎる査定額にも、低すぎる査定額にも気づけます。匿名のAI査定で、まず目安を見るのも一つの順番です。
一括査定が向いているのは、売ると決めていて、複数の会社と話して比べる時間がとれる人です。向いていないのは、まだ迷っている人、電話のやり取りを避けたい人。この場合は、先に匿名で目安をつかむほうが負担が少なくなります。
イエクラベは、仲介で売った場合と買取に出した場合の2つの概算を、匿名のまま同時に出します。連絡先をお聞きするのは、机上査定を申し込んだときだけです。それまで営業電話はかかってきません。
当社は宅地建物取引業者ではありません。売買の媒介または代理は、当社の提携する宅地建物取引業者が行います。AI査定の結果は公開データにもとづく概算であり、売買価格を保証するものではありません。
Q一括査定をすると営業電話はたくさんかかってきますか?
入力した連絡先が複数の会社に送られる仕組みなので、送られた会社の数だけ連絡が来ることがあります。何社に送られるか、連絡手段を選べるかはサービスによって違うため、申し込む前に説明を確認してください。連絡先を出さずに目安を知りたい場合は、不動産情報ライブラリで近い事例を調べるか、匿名で使えるAI査定を使う方法があります。
Qいちばん高い査定額を出した会社に任せるべきですか?
金額の高さだけで選ぶのはおすすめしません。査定額は売れる価格の保証ではないからです。宅地建物取引業法34条の2第2項は、宅建業者が価額について意見を述べるときは根拠を明らかにしなければならないと定めています。どの取引事例をもとにしたか、なぜその価格かを聞き、説明が具体的な会社を選んでください。
Q机上査定と訪問査定はどちらを選べばよいですか?
売るかどうかを決める前の目安なら机上査定、売り出し価格を決めたい・媒介契約を考えている段階なら訪問査定が向いています。机上査定は現地の状態が反映されないぶん、幅が出やすくなります。
Q囲い込みをされていないか確認する方法はありますか?
令和7年1月1日から、専任媒介・専属専任媒介の物件について、宅建業者にはレインズへの物件の取引状況の登録が義務付けられました。媒介契約後に交付される登録証明書の2次元コードから、自分の物件が「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」のどれになっているかを確認できます。
出典:e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」/国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(媒介価格に関する意見の根拠の明示義務について・抜粋)/国土交通省「価格査定マニュアルの改訂経緯(一部抜粋)」/国土交通省「レインズの機能強化について、物件の売主向けのリーフレットを作成しました!」(令和6年12月24日)/国土交通省 売主向けリーフレット(報道発表資料)/国土交通省「レインズの「ステータス管理機能」を活用しましょう!」/国土交通省「不動産情報ライブラリ」/国土交通省「「不動産情報ライブラリ」の運用を開始します」(令和6年3月1日)/国土交通省「不動産取引価格情報提供制度」/国土交通省「不動産取引価格公開サイト本格稼働開始」(平成19年4月12日)/レインズ・マーケット・インフォメーション/公益社団法人中部圏不動産流通機構
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