何を告げ、何を告げなくてよいか。ガイドラインの原文で確認します。
公開 2026年10月15日
過去に人が亡くなった家を売るとき、何を告げるかの目安は、国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月)にあります。老衰や病気による自然死、自宅での転倒や誤嚥といった日常生活の中での不慮の死は、原則として告げなくてよいとされています。それ以外の死は、買主の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合に告げる。これが売買の基本です。
賃貸には「概ね3年」という目安がありますが、売買には期間の定めがありません。迷ったときは、知っている事実を告知書に書いておくのが、後のトラブルを避けるいちばん確かな方法です。
このガイドラインは、宅地建物取引業者(不動産会社)が人の死について何をどこまで告げるかを整理したものです。対象は居住用の不動産。オフィスなど事業用の不動産は対象外です。不動産会社が媒介する場合だけでなく、自ら売主になる場合も含みます。
不動産会社の調査は、売主に告知書(物件状況報告書など)への記入を求めれば、通常の調査を果たしたことになります。原則として、近所への聞き込みやインターネットでの調査までは求められていません。
つまり、事実を一番よく知っている売主が、告知書に何を書くかが出発点になります。
ガイドラインには、もう一つ大事な一文があります。ガイドラインどおりに対応しても、それで民事上の責任を回避できるものではない、という趣旨です。売主個人の責任は、民法の契約不適合責任で別に決まります(3節)。
| 起きたこと・場所 | 賃貸 | 売買 |
|---|---|---|
| 自然死(老衰・病死など)、日常生活の中での不慮の死(転倒・誤嚥など) | 原則として告げなくてよい | 原則として告げなくてよい |
| 上と同じだが、長く人に知られず、特殊清掃などが行われた | 概ね3年が過ぎれば原則として告げなくてよい | 期間の定めなし。判断に重要な影響があると考えられれば告げる |
| 上記以外の死(自死・他殺・事故死など) | 概ね3年が過ぎれば原則として告げなくてよい | 期間の定めなし。判断に重要な影響があると考えられれば告げる |
| 隣の住戸や、ふだん使わない共用部分で起きた死 | 原則として告げなくてよい | 原則として告げなくてよい |
「概ね3年」は、ガイドラインが賃貸借について過去の裁判例などを踏まえて示した目安です。売買には同じ目安は置かれていません。年数が経てば告げなくてよい、とは読めないということです。
表の「告げなくてよい」にも例外があります。
告げる場合の内容も、ガイドラインに書かれています。
亡くなった方の氏名・年齢・住所・家族構成や、亡くなったときの様子、発見の状況までは告げる必要がないとされています。売主が「わからない」と答えた事項は、その旨を伝えれば足ります。
ガイドラインは、亡くなった方やご遺族の名誉と生活の平穏に十分配慮し、不当に侵害しないよう求めています。告知書には、事実を短く正確に書く。それ以上の詳細や、うわさの類は書かない。これが基本の姿勢です。
※告知書に書くか迷う事情があれば、媒介を依頼する不動産会社に事実をそのまま伝え、書き方を相談してください。書かずに済ませるかどうかを、売主ひとりで決めないことが大切です。
ガイドラインは不動産会社の義務の整理です。売主個人と買主の間の責任は、民法が定める売主の担保責任(いわゆる契約不適合責任)で決まります。
見落とせないのが572条です。責任を負わないという特約を結んでいても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れることができません。
過去の死が「契約の内容に適合しない」に当たるかどうかは、契約書の書き方と個々の事情で判断されます。一律の答えはありません。知っていることは告知書と契約書に書き、買主が承知したうえで契約する。それが売主を守ることにもつながります。具体的な判断は弁護士にご確認ください。
| 仲介で告知して売る | 不動産会社の買取 | 建物を解体して更地で売る | |
|---|---|---|---|
| 買主 | 一般の個人・法人(探す) | 不動産会社そのもの | 一般の個人・法人など |
| 告知 | 告知書に記入し、媒介する会社が買主に伝える | 買主の会社に事実を伝える | ガイドラインは、建物を取り壊した後の土地取引の扱いを対象にしていない |
| 内覧 | 必要 | 原則不要 | 建物の内覧はない |
| 仲介手数料 | かかる(上限あり) | かからない | 仲介ならかかる |
| 契約不適合責任 | 売主が負う(範囲は契約しだい) | 範囲は契約しだい。責任を限定する特約を結ぶかを確認 | 土地について売主が負う(範囲は契約しだい) |
| 注意点 | 買主が見つかるまでの期間が読みにくい | 価格は会社の再販計画で決まる | 解体費用が先にかかる。解体しても事実が消えるわけではない |
更地にすれば告げなくてよくなる、という決まりはありません。ガイドラインは「人の死が生じた建物が取り壊された場合の土地取引の取扱い」を、現時点では対象としていないと明記しています。解体するかどうかは、費用と、買主の受け止め方の両方から考えることになります。
買取の場合、買主は不動産会社です。再販するときには、その会社が自ら売主としてガイドラインに沿った告知をする立場になります。売主から会社へ、事実を正確に伝えておく必要があるのは同じです。
人の死があった物件の価格がどれだけ下がるかを調べた公的な統計は、見当たりません。「相場の◯割」という数字を見かけても、何の調査にもとづくのかを確かめてください。
影響の大きさは、亡くなった事情、経過した年数、場所、建物を残すかどうか、そして買主の受け止め方で変わります。一般論で決めることはできません。
ひとつの手がかりは、そうした事情を考えない場合の価格を先に知っておくことです。仲介と買取、2つの基準となる金額がわかっていれば、不動産会社から示された金額がそこからどれだけ離れているかを比べられます。基準の金額はAI査定で確認できます。
イエクラベは、仲介で売った場合と買取に出した場合の金額を同時に出します。告知が必要な事情を抱えた物件でも、まず事情を除いた2つの基準額を知っておくと、提示された金額を落ち着いて比べられます。
当社は宅地建物取引業者ではありません。売買の媒介または代理は、当社の提携する宅地建物取引業者が行います。AI査定の結果は公開データにもとづく概算であり、売買価格を保証するものではありません。
Q親が自宅で病気で亡くなりました。売るときに告げる必要はありますか?
国土交通省のガイドラインでは、老衰や病気による自然死は、原則として告げなくてよいとされています。ただし、長く人に知られず特殊清掃などが行われた場合や、買主から聞かれた場合は告げる必要があります。
Q売買でも「3年たてば告げなくてよい」のですか?
いいえ。ガイドラインが示す「概ね3年」は賃貸借についての目安で、売買には期間の定めがありません。買主の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合は、年数にかかわらず告げることになります。
Q建物を解体して更地にすれば、告げなくてよくなりますか?
そのような決まりはありません。ガイドラインは、人の死が生じた建物を取り壊した後の土地取引の扱いを、現時点では対象としていないと明記しています。事情は媒介や買取を依頼する会社に正確に伝えてください。
Q告知しなかった場合、売主はどんな責任を負いますか?
民法の契約不適合責任により、買主から代金の減額、損害賠償、契約の解除などを求められる可能性があります。責任を負わない特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れません(民法572条)。個別の判断は弁護士にご確認ください。
出典:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月)/国土交通省 報道発表「『宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン』を策定しました」(令和3年10月8日)/e-Gov法令検索「民法」第562条〜第566条・第572条
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